
|
納税者]は、平成10年12月に青色申告承認申請書をY税務署に提出し、平成12年3月15日に平成11年分の所得税の確定申告書を、青色申告決算書を添付してY税務署宛提出した。
この決算書には、青色事業専従者給与額として720万円(2人の事業専従者の月額給与60万円の12か月相当額)が計上されている。
使用人給与及び事業専従者給与は、月末締切の翌月10日支払となっているため12月分は未払金に計上した。年末調整は、平成11年12月までに支払った金額で行い、給与支払報告書をZ市へ提出した。したがって、給与支払報告書記載の金額は11か月分の合計額である。
平成12年8月 8日、Y税務署より決算書記載の青色事業専従者の給与額が、Z市へ提出した給与支払報告書記載の金額と異なる旨の電話があり、平成11年12月に未払計上した青色事業専従者給与額60万円を減額したところの修正申告書を提出するようにとの慫慂を受けた。
|
|

 |
青色事業専従者給与のうち、平成11年12月末に未払金に計上した12月分の60万円については、平成11年分の必要経費算入が認められない。
|
|

 |
12月分がその年の末日に未払であっても、所得税法57条2項に定める書類に記載されているとおりの支払(翌年1月10日)がなされていれば、平成11年分事業所得の金額の計算上必要経費に算入すべきである。 |
|

1 |
必要経費に関する所得税法の規定の概要
(所法37条)
別段の定めがあるものを除き、必要経費に算入すべき金額は
@ 総収入金額に係る売上原価
A その年における販管費、一般管理費その他の費用で
B 所得を生ずべき業務について生じたもの
C ただし、減価償却以外の費用で債務の確定しないものは除く
→ 債務確定しているものは含む
(所法57条)
@ 生計を一にする親族が
A 事業に専ら従事したことにより
B その記載されている金額の範囲内において
C 給与の支払いを受けた場合には
D 第56条の規定にかかわらず
E 労務の対価として相当な金額は
F その給与の支給に係る年分の必要経費に算入する |
2 |
所得税法37条により必要経費の認識については「債務確定基準」を採っている。所得税法57条における「支給」と「支払」について両者は下記の意味として使用されている。
「支給」= |
主として俸給、手当、旅費等の給与的性質を有するものであり、「支給する」とは、特定の給付の支給を受ける権利が発生することを意味する。 |
「支払」= |
金銭債務の履行として金銭を渡すことをいう。 |
|
「法令用語辞典」学陽書房より |
|
|

本件の場合、12月に未払計上した事業専従者給与は翌年1月10日にはその支払が行われていることが確認できる。したがって、「支払を受けた」ことは明白であり、12月末にはその支給の原因となる労務の提供を受けており、また、給与の支払義務と金額も確定している。このように年内に支給原因が発生し、給与の額が確定することがすなわち「給与の支給」であると解される。
納税者]が、12月分の事業専従者給与を未払金に計上して必要経費に算入した処理は適正なものと判断する。
|