H17.4月更新古典に学ぶ
苛砕に大体無し。(かさいにだいたいなし)
   ◆『三国志』魏書・梁習伝
  
 やたらと細かいところにまで厳しいひとは大局観をもつことができない。
   
魏・呉・蜀という三つの国の歴史について述べた『三国志』のなかで、「魏書」は三十巻からなる。
 人間の使命として、有能な後進を育成することはたいへん意義の深いことである。
 人を育てるに際して最も大切なことは、ひとそれぞれがもつ個性を損なうことのないように、ていねいに育てることではなかろうか。手塩にかけるとはこのことだ。
 したがって、ひとを育成する基本は、まずその人物をじっくりと視ることからはじめなければならない。
 孔子も『論語』のなかで、「其の以す所を視、其の由る所を観、其の安ずる所を察すれば、人焉(いづく)んぞカクさんや」(「為政篇」)と、述べている。
 要するに、その人物の行為をつぶさに視る、次いでその行道がどんな動機でなされているのかを観る、そしてその人物が目標としている暮らし方を理解すれば、その人物の人柄は明らかになるということだ。 この点さえしっかり押さえておけば、あまり細かなことにふれないほうが賢明だ。転んだからといってすぐ抱き起こしていると、自立する精神が育たない。よい見本を示しつづければ、それで十分なのである。

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