16年12月更新   古典に学ぶ
 一利を興(おこ)すは一害を除くに如かず、
 一事を生ずるは一事を省くに如かず。

                 
 ◆ 『元史』 邪律楚材伝
大 要
 利益のなることをひとつ新しくはじめるより、現在害になっていることをひとつ取り除いたほうがよい。
 新しく仕事を加えるよりは、現在無駄になっている仕事をひとつ省いたほうがよい。
解 説

邪律楚材は大蒙古帝国太祖チンギス・ハンの重臣である。太祖が後継のオゴデイに「楚材卿は天からわが家に賜ったひとだ。これからの国政はすべて卿に任せるがよい」と語ったと伝えられる。
 また、当時の蒙古風に対し漢風に改めることによって、帝国の基盤が備えられた。蒙古帝国成立に耶律楚材は測り知れない貢献をしている。
 チンギス・ハンをはじめ蒙古の将兵のイメージは荒々しさが先に立つ。この言葉からも、勇み立つ君主を理性で諫める姿が目に浮かぶようである。
 組織をうまく機能させるためには、身軽であることも見逃せない要件だ。目先の利得に走るばかりで、小さな問題をないがしろにしていると、やがて簡単に取り除けないほどの問題に膨張してしまうこともある。
 組織の運用を考えるうえでは、攻守の陣容を適切に保つことが肝要である。
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