人徳によって国を治める者がほんとうの王である。武力で威嚇して人民を従わそうとする者は、武力についやす資力が衰えると途端に弱くなる。財力でひとを思うままに使おうとする者は、いたずらに出費がかさんで貧しくなる。
  H15.11月更新
『徳を以て人を兼ねる者は王たり、力を以て人を兼ねる者は弱く、富を以て人を兼ねる者は貧し。』
   孟子の言葉に
「徳を以て仁を行う者は王たり」(「公孫丑章句上」)
とある。徳とは誠実なまごころをいい、仁とは情愛、慈悲のこころをいう。こうしたこころがなければ、ひとの上に立つ資格がないと説いている。
 権力には、人のこころをねじ曲げる恐ろしい毒がある。自分でよほど気を付けていないと、知らぬ間にこの毒に冒されてしまうものだ。
 人間の犯す間違いのなかで最も始末の悪いのが、錯覚による過ちだ。本人がよかれと思っていることが、傍らではたいへん迷惑になることがよくある。
 順調に事がはこんでいるときに、こうした錯覚が生じやすい。この錯覚から逃れるには周囲の反応を自分の目でよく確かめ、自分の力を過信することなく、周囲と協調する姿勢を大切にすることだ。
 力ずくで、頭数だけ揃えても効果は上がらない。ひとが寄ってくるような、魅力的な人格をつくるのが自分に課す最大の挑戦目標だといっても過言ではあるまい。