15.5月更新 古典に学ぶ

安居無き非ざるなり、我に安心無きなり

                         ◇『墨子』親士篇
 大要

 安心して住める場所がないのではない。自分がそこに安住する意志がないのだ。わたしにはまだやるべきことがあるのだ。

 解説

志のある者は、いまが安定しているからといって、そこに安住することなど考えていない。自らすすんで困難な仕事に挑戦し、自分の意志の赴くところへ突きすすんでいくものだ、と教えている。

本来、目標のない人生など考えられないことだ。しかし、現実には目標をもてない、的を絞り切れないひとは非常に多い。考えようによっては、目標のない日々を無為に重ねる人生もたいそう辛いことだと思う。
 人士の目標について考えるとき、黒澤明 の名作『生きる』を思い出す。目標をはっきり意識したときから充実した時間がはじまる。時間に攫われるのではない、時間を追いかける自分を発見するのだ。
 目標は明確に、行動は明瞭に、をこころがけることがとても大切だ。目標も定まり、いざ出陣を前にして、
      「春風や 闘志いだきて 丘に立つ」
高浜虚子の名句のように、颯爽と雄々しく人生に立ち向かいた。
 人の一生は一回限り、安居して安心をむさぼるのは、絶えずまだまだ先の事だと考えるべきえある。