平成17年 12月更新分 

大要
 
 本当に道理を知る者は、あれこれ口に出して言わないものである。口から出る言葉数の多い者は、実は何も知らないのである。
解説
 老子哲学のきわめて重要なテーマが、この言葉に凝縮されている。

 老子は、忘言忘知の境地に至ってはじめてひとと道との一致が実現される、と説く。その忘言忘知の境地に至る根本がこの言葉である。
  
 老子は、ひととしては、この言葉の意味するところよりさらに上の境地がある、と言う。
 『老子』第七十一章に、「知らざるを知るは上なり」とあるのがそれである。
  
 顔では知っているぞとほのめかしながら、口では知らないとうそぶくような素振りを言っているのではない。自分でよく知ったうえで、なお知らないと謙虚になるこころをもてば、これに勝るものはない、と説いているのである。 

 その逆のひとには、大変手厳しい。
 「知るを知らざるは、病
(へい)なり。夫れ唯だ病を病とす」
 知ったかぶりは病いの中でも性
(たち)の悪い病だ、と吐き捨てるように述べている。


  
謙虚を身に備えるには、口達者ではなく聞き上手になることが第一歩なのかもしれない。
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