第12回 源泉所得税 実務のポイント

15.8月更新

=人間ドックの検診費用を会社が負担するとき=

Q12
 当社では、このたび40歳以上の従業員を対象に人間ドックの検診を行います。この場合の検診費用は源泉徴収の対象になりますか。
 特定の従業員を対象として検診を実施する場合は、源泉徴収が必要になります。







 全従業員を対象とする検診費用
  従業員が勤労者たる地位に基づき会社から受ける経済的利益は、原則として給与所得の収入金額に含めなければなりませんが、次の様な場合には、給与所得として課税しなくてもよいこととされています。



@
A
B
C
役務の提供が受給者の職務遂行に欠くことが出来ないものであること
受給者にとって選択の余地がないものであること
経済的利益の額が少額であること
政策的な判断から課税することが相当ではないと認められること




  したがって、会社が従業員の健康管理を考慮して人間ドックの検診料を負担する場合においても、次のような条件で実施している場合には、給与として課税されることはありません。




@
AB

C
労働者に対する健康診断が義務付けられていること
人間ドックの検診が、健康管理上、一般的に実施されていること
全従業員を対象とするものであること(一定の年齢以上の全ての者が対象という場合も認められます)
検診料が通常必要であると認められる範囲内のものであること









 全従業員の配偶者を対象とする検診費用
  なお、人間ドックの検診が全従業員及びその配偶者を対象として行われるものである場合には、従業員については上記要件を満たすような検診であれば、給与として取り扱われることはありませんが、その配偶者の検診料については次の理由から非課税とはならず、その配偶者の従業員に対する給与として取り扱われることとなります。

                                    

@ 会社には、従業員の配偶者に対する健康管理義務がないこと
A
従業員の配偶者を対象とする人間ドックの検診が、社会一般的に行われていないこと





 給与とされる検診費用
  また、その人間ドックの検診料が次のようなものである場合には、給与として取り扱われますので、この場合には源泉徴収を忘れずに行わなければなりません。


                                    

@その検診が、役員又は特定の社員だけを対象としている場合
Aその検診費用が社会通念上著しく高額であると認められる場合  


 




 検診不参加者に対して現金支給する場合
  なお、会社が検診を受けられなかった従業員に対して、その検診費用相当額の金銭を支給する場合には、その支給した金銭が検診費用に充当されるかどうかにかかわらず、その経済的利益はその従業員に対する給与としてとり扱われます。


 








参考資料 : (財)全国法人会総連合 発行
「源泉所得税 実務のポイント」