第10回 源泉所得税 実務のポイント
15.6月更新

=死亡退職金を支給するとき=

Q10
 当社の従業員が先日事故で亡くなりましたので、遺族の方に退職金を支払うこととしました。源泉徴収はどうするのですか。
 死亡による退職金からは所得税の源泉徴収はしません。







 生前退職金と死亡退職金                   
 退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に支払を受ける一切の給与をいいますが、会社が退職手当等を支給する場合には、原則 、所得税の源泉徴収をしなければなりません。                    ただし、死亡により退職した者の遺族が受ける退職手当等で、その死亡後に支給期の到来するもののうち、相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものについては、所得税が課税されないことになっていますので、この場合の退職手当等からは所得税の源泉徴収をする必要はありません。
 なお、相続税の課税価格計算の基礎に算入される退職手当等とは、その支給が被相続人の
死亡後3年以内に確定したものとされていますので、被相続人の死亡後3年経過後に支給が確定したものについては適用がありません。
この場合には、相続税ではなく、その支給を受けた
遺族の一時所得として所得税が課税されますので、源泉徴収は不要ですが、所得税の確定申告が必要になります。
 このように、死亡した者の遺族に支給される退職手当等は、その支給期が、被相続人の
死亡の前であったか、死亡の後であったかによって課税上の取扱いが違いますので注意しなければなりません。
 
 これらをまとめますと、次のようになります。                       
退職手当等の内容 課税上の取扱い
生前退職金 退職所得として課税
被相続人の死亡後3年以内
に支給が確定した退職金等
被相続人の相続財産(退職手当
金)として相続税課税
被相続人の死亡後3年経過後
に支給が確定した退職金等
支給を受けた遺族の一時所得として課税

                                     



                                  
 

 弔慰金の取扱い          
 また、従業員が死亡した場合に退職金の他に弔慰金が支払われる場合もありますが、この弔慰金については、その額が社会通念上相当な金額である限り所得税も相続税も課税されないこととされています。
 弔慰金の金額が社会通念上相当かどうかの判断は、相続税の規定において、死亡した者の死亡原因に応じ、次の金額までは課税しないとしていますので、この金額をひとつの目安にすればよいでしょう。
 なお、社会通念上相当と認められる金額を超える部分は、退職手当等として取り扱われます。

                         
被相続人の死亡原因 非課税の範囲
業務上の死亡であるとき その被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与の3年分に相当する金額
業務上の死亡でないとき
その被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与の半年分に相当する金額