第八回 源泉所得税 実務のポイント
15.4月更新

=金銭の貸付けと源泉徴収

Q8
 従業員に会社の資金を貸し付ける場合、所得税の源泉徴収が必要になる場合があるそうですが、どのような場合ですか。
 特定の場合を除き、通常の利息相当額を徴収していない場合には、所得税の源泉徴収が必要になります。





 貸付金に対する原則的取扱い                   
 会社が、従業員に資金を貸し付ける場合、次に掲げる通常の利息相当額を徴収していないときは、通常の利息相当額と実際に従業員から徴収している利息との差額に相当する金額の現物給与の支給があったものとして取り扱われますので、会社はその現物給与について源泉徴収する必要が生じます。
                         
        区      分      通常の利息相当額
@ 会社が他から借り入れて貸し付けたものであることが明らかなもの その借入金の利率により計算した利息相当額
A 上記以外 年4.1%(平成14年中の貸付に適用)の利率により計算した利息相当額
                                                     上記の利率より低い利率であっても、その利率が会社の平均調達金
  利など合理的な基準に基づくものであれば通常の利息相当額として認
  められます。
                                     



 非課税となる無利息貸付け                   
 ただし、その貸付けが次に該当するものであるときは、その経済的利益に対しては課税しないこととされていますので、源泉徴収の必要はありません。
                     
@ 災害や疾病等の臨時的生活資金で、返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける経済的利益
A その年(事業年度)の利益相当額が5,000万以下となる少額な経済的利益
                                                    


 社員に対する住宅取得資金の取扱い           
 会社が、宅地の取得や住宅の建築をする社員(会社の役員等に対しては適用がありません)に対して資金の貸し付けを行う場合や利子補給をする場合には、住宅政策等の見地から特別の取扱いが認められていて、一定範囲の経済的利益には課税されず、それを超える経済的利益に課税することとされています。
 ここで課税される経済的利益とは、平成16年12月31日までの間に受ける経済的利益のうち、次の算式で計算した金額です。
 (1)低利貸付けの場合
課税される
経済的利益
住宅取得資金につき年1%の
利率
により計算した利息相当額
住宅取得資金について実際に支払う利息の額

 (2)利子補給の場合
課税される
経済的利益
住宅取得資金につき
年1%の利率により計
算した利息相当額
住宅取得借入金について実際に支払う利息の額 利子補給の額
  つまり、社員の負担する住宅取得資金の最終的な金利が1%以上になる場合は、その経済的利益に対する課税は行われず1%未満となる場合にはじめて課税が行われ、この場合にその経済的利益について所得税の源泉徴収が必要となるわけです。